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小学生白書Web版 2011年6月調査<分析編プレビュー>

災害時、保護者が望む下校方法は「引き渡し」

石井久雄(明治学院大学准教授)

東日本大震災(3月11日)が起こったとき、首都圏の子どもたちは、どのように家に帰ったのであろうか。震災時における下校方法は、「引き渡し」(43.5%)、「集団下校」(40.3%)、「一人で帰ってきた」(10.9%)、「その他」(5.3%)となっている。「引き渡し」と「集団下校」が両者とも4割を超え、どちらかの方法で下校させた学校が大半であったといえる。
(詳細は、「小学生白書Web版」2011年6月調査〈速報版〉より、下記サイト参照
「下校のようす」 http://www.gakken.co.jp/kyouikusouken/whitepaper/201106/03.html )
そこで、「引き渡し」と「集団下校」に注目し、両者の下校方法に対して、保護者がどのようにとらえ、どちらの下校方法がより安心できると考えているのかを探ってみることにしよう。

まず、下校方法によって、学校対応への保護者の評価に違いがあるのかをみてみよう。図B-1は、下校方法別に、「震災の日の下校に関して先生や学校の対応は適切であった」と思うかについての結果を示したものである。それによると、「引き渡し」により帰宅した子どもの保護者のうち88.9%の者が、「学校の対応が適切であった」(「とても適切であった」と「まあ適切であった」の合計の割合)と回答している。また、「集団下校」により帰宅した子どもの保護者のうち76.3%の者が、「学校の対応が適切であった」(「とても適切であった」と「まあ適切であった」の合計の割合)と回答している。「集団下校」よりも「引き渡し」により帰宅した子どもの保護者の方が、そうした下校方法を選択した「学校の対応が適切である」と思っていることが分かる。

図B-1 下校方法別にみた「学校対応の適切さ」

次に、下校方法への保護者の評価についてみてみよう。震災当日に「集団下校」した子どもの保護者に対して、「別の方法で下校する方が良かったと思うか」どうかを尋ねてみた(図B-2参照)。その結果、「とてもそう思う」が13.4%、「まあそう思う」が34.8%となっており、合計すると5割近くの保護者が、「集団下校」以外の下校方法が良かったと感じている。同様に、震災当日に「引き渡し」だった子どもの保護者に対して、「別の方法で下校する方が良かったと思うか」どうかを尋ねてみた(図B-3参照)。その結果、「とてもそう思う」が5.0%、「まあそう思う」が16.1%となっており、合計しても2割程度にとどまっている。逆に言えば、8割近くの保護者が、「引き渡し」の下校方法で良かったと思っている。

図B-2 【集団下校】別の下校方法が良かったか(N=374)

図B-3 【引渡し】別の下校方法が良かったか(N=403)

以上のように、震災の日に「引き渡し」によって下校した子どもの保護者の方が、「学校の対応は適切であった」と思い、また「引き渡し」で下校したことを「良かった」と感じている。保護者が、「集団下校」よりも「引き渡し」の方が、良いと思うのは何故なのであろうか。その要因を探るため、それぞれの下校方法に対する保護者の意見を検討してみることにしよう。

まず、「集団下校」により帰ってきた子どもの保護者に、「集団下校」の問題点を、自由記述で回答してもらったところ、主要なものとして「子どもたちだけで下校するのは危険」、「自宅に誰もいない子も下校させたこと」の2点が挙げられた。余震が続いていたなか、あるいは停電等で交通機関が乱れているなか、子どもたちだけで「集団下校」し、通学路で危険な目にあうのではないか。「集団下校」で帰宅しても、大人がいなくて家に入れず、外で子ども一人で待っているのではないか。このように、「集団下校」には、子どもの身の安全に関わる問題が生じてくる。

もちろん、「引き渡し」にも、問題点はある。「引き渡し」により帰ってきた子どもの保護者に、「引き渡し」の問題点を、自由記述で回答してもらったところ、主要なものとして「引き渡しに時間がかかった」、「保護者が誰も迎えにいけない児童の扱い」の2点が挙げられた。学校に急いで迎えにいったのにもかかわらず、実際に子どもを引き渡してもらうまでに長い時間待たされて困った。「引き渡し」の場合、保護者が帰宅困難な状況に陥ってしまったとき、子どもが深夜まで学校にいることになり、精神的・肉体的に負担がかかってしまう。このように、「引き渡し」にも、手続き上の問題や、学校に取り残される子どもの問題が生じてくる。しかし、学校にいる限り、大人が周りにおり、子どもの身の安全に関わる問題は起きにくいと考えられる。

以上のように、保護者は、災害時における下校方法として、子どもの身の安全をより確保しやすい「引き渡し」の方を望んでいるといえよう。しかし、「引き渡し」にも課題はある。保護者の声に耳を傾けながら、災害時のよりよい下校方法を模索していくことが重要である。

なお、災害時のよりよい下校方法を巡っては、子どもの学年、保護者の就労状況等、様々な要因を考察していく必要がある。より詳細な分析に関しては、「分析編完成版(仮)」を参照していただきたい(10月頃UP予定)。

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