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研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第14回 今月の事例『しゃべりだしたら止まらない』

2011年1月14日

私たち保育者は、一斉保育をしていくうえで欠かせないのが子どもたちに話をすることです。具体的には、製作活動の工程や約束ごとなどの説明があげられますが、短い話であれば朝の集まりでの一日の予定や帰りの会での振り返りなども含まれます。園生活の至るところで話や説明を行い、子どもたちはそれらを聞いています。当然、発達年齢にあわせた、子どもたちにわかりやすい話し方が求められます。

しかし、私たちが様々な工夫をして話をしても子どもたちに途中で急に違う話をされたり、こちらの質問に対して最後まで聞かないで的外れな答えをされたりした経験はありませんか?それによって収集がつかなくなったり、思うように自分の話す「ペース」をつかめなかったりした経験はあると思います。

年長組になると集団での話や話し合いが増えてきます。場合によっては2クラス合同で先生の話を聞く活動があるかもしれません。みんな静かに聞いているときに「先生あのね~」、「あっ!それね、○○だよ」と話出してしまうと、みんなから「うるさい」と注意されてしまい、その「うるさい」が積み重なると「また、○○ちゃんだ・・」と嫌がられたりします。今回はそんな子どもについて一緒に考えてみましょう。

Eちゃんは、年長組で明るくおしゃべりが大好きな女の子です。絵を描くことも大好きで自由遊びの時には「先生、見て。かわいいでしょう?」といつも見せに来てくれます。しかし、決まってアニメの(目がキラキラした)かわいい女の子のキャラクターが2人描かれている絵を持ってきます。楽しそうに友だちとおしゃべりをしていることもありますが、これも決まってEちゃんの興味がある内容で、一方的な関わりが多いように感じます。聞いている友だちは困った表情を浮かべていることが多くみられます。このような関わりからか、最近では友だちから距離を取られているように思います。

昨日、絵本を読んでいたことです。途中でねずみが出てくる内容でした。すると「あっ、ねずみだ。Eちゃんね、昨日ねずみが出てくる絵本読んだんだよ!そのねずみはね○○っていう名前でね~」と何かのスイッチが入ったかのようにその絵本のストーリーを話し始めてしまいました。友だちは「またEちゃんか・・」と半ばあきらめがちな雰囲気が流れてしました。私は「Eちゃん、今先生がお話しているから」と注意するとその場は止まりました。安心して読み進めると今度は「先生の机のうえのあれは何?」と質問され、机のうえにはいつも使用しているのりが置いてありました。私は不思議に思いながらも「えっ、のりだよ」と返答しました。Eちゃんは「へ~」という表情を浮かべただけで何も反応はありませんでした。私もクラスメイトもきつねにつままれた気持ちになり、私もクラスメイトも絵本に集中できないまま終わってしまいました。

みなさんのクラスにもこんな子いませんか?

皆さんはこのようなお子さんにはどのような対応をしますか?考えてみてください。
  • その都度質問に答え続ける。
  • 活動時間や保育者の気持ちに余裕があるときは、話を聞いたり質問に答えたりする。
  • 「先生が話をしているでしょう!」と強い口調でその都度、注意する。
Eちゃんはどうしてそのような姿なのでしょうか?
  • 自分の行動や欲求をコントロールできない。
  • 状況を読む力が弱い。
  • 自分の起こした言動が友だちにどのような影響を与えているのかを客観的に振り返ることが苦手である。

 

などが挙げられるのではないでしょうか。皆さんはどう思いますか?

さて、この様な子は、どんな子なのでしょうか。
Eちゃんを保育しながら、私なりに対応を考えてみました。

【手立て&ヒント】

みんなが話を聞いている場面でおしゃべりを続けたり、関係のない質問をしたりするなどの行為が定着すると就学してからとても大変になります。年長組の先生であれば小学校の授業場面を想定して課題を捉えて対応しましょう。

みんなで話を聞く練習を確認する。

それほど意識していないでおしゃべりをしたり、質問をしたりする子どもがいます。それであれば、意識する関わりを持てばよいのではないでしょうか。また、衝動的に言ってしまったり、状況をうまく読めなかったりすることについても『今、話しても良いかどうか』をその子が理解しやすいかたちで伝えることが大切です。

そこでまず保育者が話や説明をする前にクラス全員に『話を聞く時のお約束』を確認し、十分意識させてからスタートすると良いと思います。 
例えば、ホワイトボードに
『おはなしをきくめいじん
(1)せんせいがおはなししているときは、おしゃべりしない
(2)せんせいのほうにおへそをむける
(3)てをあげておはなしをする』
と書きます。それをみんなで確認してからはじめると良いでしょう。字が読める子であれば事前に個別に先生と読み合わせをしたり、確認する時に『(1)を読んで下さい』と促すなどの工夫をするとさらに効果的です。くわえて、途中で約束を忘れてしまう子どもにとっても視覚的に残るため、見て思いだすことができるというメリットもあります。

気づけるサインやきっかけを提示する。

子どもが話し出してしまったら、そのことに子どもが気づけるよう絵カードやサインを決めておきましょう。くわえて先生の話が途切れないようにする方法を考えます。
事前に絵(例えば「唇の上に“×”を書く」、「顔の絵に“しー”と指で促しているイラスト」)を貼っておき、それに文字を加えても良いでしょう。絵だけのものや絵と文字を組み合わせたものなどその子の理解に合わせて工夫をすると良いでしょう。

また、先生とその子の間でのサインを考えおくことも良いでしょう。例えば「先生が掌を○○ちゃんのほうにむけたらお話ストップだよ」、「先生が口に指を当てたらおしゃべりしないんだよ、ということだよ」など実際に見せたうえで、取りきめをすると注意をする声を出さないで対応できることがあります。
くわえて、しゃべり出しそうなときや集中が切れてきたところを見計らって「○○君、良くお話を聞いているね」と『先手』を打つのも効果的です。

『何をしているときで』、『何をしている場なのか』を思い出せるような関わりをする。

その場にそぐわない言動が多い場合は、「あれっ、○○君今は何の話をしているんだっけ?」、「今先生は遠足の大事な話をしているよ」などと知らせ子どもが気付けるようにしましょう。思いだすきっかけがあれば自分の言動を振り返り、抑制することができる場合もあります。この営みがその子の成長をサポートすることにつながり、就学してから自分で抑制するトレーニングにもなります。
その子の言動を否定し続けると集団そのものに嫌悪感の抱き、集団参加を拒む姿が出てくる可能性があるため、配慮が必要でしょう。

後で聞く時間を設ける。

おしゃべりや聞きたいことを『ストップ』する分、後で自由遊びの時間に聞くなどの時間を設けると良いと思います。例えば「じゃあ○○ちゃん、その話は後でちゃんと聞くからね」と言ってその場は一旦遮り、後で聞くことを約束します。そして後で聞きましょう。
この約束は保育者としてしっかり守りましょう。集団をみている私たちは日々の活動に追われ、思わず忘れてしまうことがあるかもしれませんが、その子にとっては大事な約束です。約束を守ってもらえないことが続くと先生との信頼関係が崩れ、修復が難しくなることがありますので注意しましょう。

一斉活動で話をしている時に先生が話をしているテーマから大きく離れていないか、言葉でのやり取りは成立しているか、声の大きさや言葉の使い方、発音など『聞く、話す』ことに課題を持っていないか、観察をしましょう。細かいことでも良いのでその日のうちに保育日誌や個人記録に記入しておくとその子のつますきがみえやすくなり、サポートが行いやすくなります。

次回の事例は『落ちつきがなく友だちからういている』です。

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