TOP > 研究分野 > 発達支援研究分野連載コラム:「気になる子」のことをもっと知ろう! > 第13回 今月の事例『友だちにルールを守らせようとしてけんかになる』

研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第13回 今月の事例『友だちにルールを守らせようとしてけんかになる』

2010年10月22日

 子どもたちが遊ぶ姿として、年中組では「簡単なルールがある集団遊びを楽しむ」という姿から年長組では「自分たちで複雑なルールを作って遊ぶ」という姿に変化していきます。年長組になると同じ目的を持った仲間と集団で行動することが多くなり、遊びをより楽しむために自分たちでルールを作ったり、守ることの必要性を理解していきます。しかし、発達障がいがある子のなかに友だちに対して過剰にルールを守らせようとしてトラブルになることが多くあります。今回はそんな子どもについて考えてみます。

D君は友だちと遊んでいると最初はとても楽しそうに遊んでいるのですが、友だちがルールを少しでも守らないと急に怒りだしてしまいます。例えば、氷オニで逃げる範囲を『園庭』と決めて遊んでいたのですが、逃げることに集中した友だちが玄関のほうまで逃げてしまいました。その子は園庭から出たことに気付き、急いで戻ってきましたが、それを見ていたD君は「園庭でた」と怒り出し、その子の頭をポカリ。

その子は「間違って出ちゃったの!すぐ戻ってきたじゃん。」とD君に伝えているのですがD君は聞く耳を持っていない様子でした。

お片付けの時間も同じようなことが起きます。私が「お片付けですよ」と伝えた後に少しでも遊んでいる友だちがいるといつものように頭をポカリ。叩かない時もあるのですが、その時は片づけをしていない友だちが持っている積み木を急に奪い取り、箱に入れます。叩かれて、おもちゃを奪われた子どもは驚いてD君に「今片づけようとしているの!」「今やろうとしているの!」と伝えても同様に聞く耳を持っていないようでD君は表情を変えません。

また、「では、園庭に行くので並びましょう」との声をかけると、列にすぐ並ばない友だちの腕を力任せに引っ張り、列に並ばせようとします。

みなさんのクラスにもこんな子はいませんか?

皆さんはこのようなお子さんにはこのような対応をしますか?考えてみてください。
  • 「叩いちゃダメ!」「引っ張っちゃダメ!」と注意する。
  • 先に手を出したほうがいけないと伝える。
  • 相手が痛がっていることに気付かせる。
  • 無理やり引っ張る、無理やり奪うことがいけないことをC君に説明する。
D君はどうしてそのような姿なのでしょうか?
  • ルールや約束にこだわりすぎる。
  • 対応を柔軟にするために自分をコントロールする力が弱い。
  • 自分の感情や考えを言葉で相手に伝えることが苦手である。

などが挙げられるのではないでしょうか。皆さんはどう思いますか?

さて、この様な子は、どんな子なのでしょうか。
Aちゃんを保育しながら、私なりに対応を考えてみました。

【手立て&ヒント】
ルールや約束を守ることは大切ですが、それが友だちに受け入れられないほど過剰になってしまってはD君とクラスメイトとの距離は広がるばかりです。このような状態ではD君はクラスから浮いてしまうでしょう。

正しいことを認め、適切な言葉を伝える

D君の片付けや列に並ぶといった友だちへの“強制行為”は、先生の指示に忠実に従おうとする姿の現れです。当然、相手が嫌がっていたり、痛がっていたりすることに気付かせることは大切です。ただし、先生に従おうとしていることは正しいということを認めてあげましょう。まず「先生の言ったことを守ろうとしてくれてありがとう」伝えます。 
そのように認めたうえで「園庭から出たらいけないんだって言おう」「並ぼうって言いましょう」「片づけだよって伝えましょう」と具体的に教えます。その際、可能なら対象児から『一番伝えたいことは何か』を引き出し、それに添った言葉を持たせると良いと思います。例えば、「園庭の中で氷オニをしないとオニがタッチできない」と本人が言ったならば「では、次は『園庭出たら、タッチできない』って伝えましょう」と対応をすると次に生かせるかもしれません。 
そのような対応を通して常に先生と良い関係を維持していきましょう。このような状況はD君が孤立しがちになりますので、D君の本当の気持ちを代弁するなどの配慮が必要になってきます。

相手の子どもにもD君がそうさせた原因がどこにあったのかを理解させ、どうすればよかったのかを考えさせる

園庭から出てしまった子には「今度は出ないように気をつけようね」や片づけなかった子、並ばなかった子にも「今度はすぐ片づけようね(並ぼうね)」と声をかけ単純に被害者意識だけに終わらせないようにしましょう。

幅をもたせた指示を出すよう心がける

D君のようなルールや約束を几帳面に守る子どもがいるクラスへの指示の出し方は『何事も限定して言わないようにする』ことがポイントに挙げられます。
例えば、はじめに「七夕製作は『三角つなぎ』『輪飾り』『天の川飾り』の3つを作りましょう」と指示した場合、あとから「時間がなくなってきたので、2つでもいいです」と指示を訂正すると混乱して怒り出したり、泣きだしたり、3つ完成するまで延々とやり続けたりします。途中でやめなければならなくなるとそれがパニックの原因にもなります。
この場合は「少なくとも2つまで作ろう。早く終わったお友だちは3つ目をやってもいいです」などのように幅を持たせた指示を出すとよりスムーズです。

最後にD君のような行動をとる子どもは、幼児期に前述の対応をとらないと就学してからゲームや遊びで本人だけが知っている独特のルールを創作し、周りの友だちにもそのルールが了解されているかのように振る舞い、パニックになってしまうといった行動をとることが多く見受けられます。幼児期には前述の対応に加えて、家庭と協力して生活体験の幅を広げていき、生きる上での柔軟性を身につけていく息の長い対応を積み重ねていくことが必要になっていきます。

次回の事例は"『しゃべりだしたら止まらない』"です。

←前ページに戻る次ページにすすむ→

▲このページのトップに戻る