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研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第12回 今月の事例『当番活動をすると何をしたら良いかわからなくなる』

2010年9月15日

 当番活動が始まると“ふっといなくなる”、“ただ見ているだけ”、“友だちの周りをフラフラする”などの行動をする子どもがいます。先生として当番活動は、子どもにとって大切な活動であるため、しっかり取り組んでほしい活動の一つです。しかし、思うように活動に取り組めず注意や叱責ばかりが多くなってしまい、思い返すとその子どもにつきっきりになって「しっかりやってよ」という言葉がけばかりしてクラスメイトへの関わりがなかった、ということはありませんか?

私のクラスでは、男女別に毎日2人ずつ当番をすることになっています。みんな生き物の世話をしたり、決められた仕事をしたりすることをいつも楽しみにしています。C君もその一人。
しかし、C君は当番(特に生き物)の仕事には興味は示すものの、活動は始めると途端に"フラッといなくなる""友だちのまわりをウロウロする"などの行動を取り始めます。そのためクラスメイトから「ねえ、C君。ちゃんと仕事して!」「C君!早く水を代えてよ!」と強い口調で言われてしまいます。そのような状態が続いたため、「先生。私C君が仕事やらないから一緒にしたくない」「C君じゃない人とやりたい」と訴えてくる子どもが出てきました。そのことをC君に話すと「だって当番活動つまんないんだもん」「みんな怒るから嫌」と言いました。そのため、以前から活動の様子を要所要所では見に行っていたのですが、C君が当番のときは最初から見るようにしました。
C君にそのことを伝え、「やらない、というのはダメだよ。先生も一緒にするから」と伝えました。すると、何をして良いかわからない、困惑した表情を浮かべながら取り組んでいるC君がいました。くわえて、ウサギのウンチをジッーと見ていて動かない姿もありました。また、ウサギやニワトリの小屋を掃除する際に使用するほうきの動かし方がどことなくぎこちなく、最後はみんなが集めた毛や羽を逆にちらかしてしまう場面もありました。
みなさんのクラスにもこんな子はいませんか?

皆さんはこのようなお子さんにはどのような対応をしますか?考えてみてください。
  • 「みんな仕事をしているんだからC君もちゃんとしなさい」と声をかける。
  • クラスメイトに「わからないかもしれないから、C君に教えてあげてね」と伝える。
  • C君と一つずつ一緒に取り組む。
  • 「みんな困っているよ」と注意する。
C君はどうしてそのような姿なのでしょうか?
  • 当番内容が覚えられない。
  • 集中して仕事を続けるのが苦手。
  • 友だちと協力して仕事をすることが難しい。
  • 自分がやることがわからない。

【手立て&ヒント】

○仕事の見通しが持てるように、内容をわかりやすく伝える。

当番活動でどういうことをするのか、絵や文字などで説明しましょう。C君のようなタイプは当番の仕事の“終わり”が見えず、不安になり、だんだん嫌になっていってしまうことがあります。そこで子どもがイメージしやすい方法で伝えると良いでしょう。
具体的には、目で見て理解しやすく、手順が明確な当番表などがあれば安心して取り組めると思います。その際、例えば「当日、転入してきたクラスメイトがその手順表を見てその日にすぐ取り組める」レベルのわかりやすい手順表が良いでしょう。また、『何をどれだけ必要で、どこまでしたら終わりか』がわかるように心がけましょう。例えば、『えさは、3杯』『ちりとりのゴミを捨てたら掃除はおしまい』というようにです。
折に触れて、帰りの会などで手順表をクラスみんなで確認しましょう。
なお、「明日の当番は○○君、○○ちゃん・・」など前日にあらかじめ知らせておくと当日混乱しないと思います。可能ならば、当番表は曜日別に名前を書いておくことはもちろん、本人の写真もあわせて貼ってあると文字が読めない子どももわかりやすいでしょう。そして、何気ない時間でも見れるようにしておくと自然と子どもたちは覚えていきます。

○部分的な参加も考える。

最初から最後までしっかり活動内容に取り組もうとするのではなく、徐々に参加していけるようにします。先生もC君と参加し、友だちの動きや手順表を見てC君が参加できそうな部分からスタートしたり、内容がシンプルで取り組みやすそうな役割を見つけたりなどC君が参加できそうな活動から援助するのも良いでしょう。例えば、友だちが集めたごみをちりとりに入れる、「いただきます」と言ってもらうなどシンプルな役割からでも良いと思います。

○『みんなと』が意識できるようにする。

まずは、2人で力を合わせる簡単な作業からスタートします。場合によっては、一人でできる仕事で自信を養ってからでも良いでしょう。つまり、まずは少人数の作業から始めます。年長組になれば机を2人で運ぶことも可能になってきます。まずは先生と2人ではじめ、慣れてきたら友だちに代わってもらいましょう。
そして最初と最後の「当番を始めます」「終わります。ありがとうございました」などの『挨拶』をみんなで言い、当番活動への意識づけを行うとともに、『友だちと一緒に』という気持ちが育っていくよう働きかけます。
なお、当番のときだけ「お仕事しましょう」「協力して」と言ってもすぐにはイメージできず、理解が難しい子どもがいます。普段のごっこ遊びやお片付けなどの場面を通して、当番活動のイメージを広げる働きかけをしていきましょう。

○ほうきの使い方を保育者と一緒に確認する。

気になる子や発達障がいがある子は、目で見た動きを自分の身体を使って動かすことが苦手です。物を使っての動きはさらに苦手です。ほうきは手を動かしながら、目でごみの量を見て、調整をしていく力が必要です。同時に様々な動きが求められます。
そこでほうきの使い方を保育者と一緒に練習します。保育者は、C君の後ろから覆うようにしてC君の手をうえから添えます。そして実際に同じ姿勢でほうきを持ち、ごみを掃いてみましょう。
また、掃除は最初は力強く、徐々に力を緩め小刻みにほうきを動かしながらごみを集めていきます。つまり、『力の加減』と『“ダイナミックに動かす”⇒“小刻みに動かす”というより複雑になっていく動き』の両方のスキルが求められるのです。
まずは、C君と一緒にほうきの使い方を練習しましょう。そして掃除する『場所』も限定すると見通しがもて安心し、任された場所を見て「きれいになったね~」と実感することを通して当番活動の達成感や充実感を味わえると思います。

 

次回の事例は"「友だちにルールを守らせようとしてトラブルになる」"です。

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