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研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第10回 今月の事例『ボーっとしていることが多く、活動にのれないAちゃん』

2010年5月13日

 保育者が一斉活動をすすめていくうえで困る場面は、“席を離れて立ち歩いてしまう子”や“先生の話と関係ない話をはじめてしまう子”などが挙げられるのではないでしょうか。前述の子どもは周囲に何かを“発信”している姿とも受け取れ、目で見てわかりやすい不適応の姿です。しかし、今回は困っていることやわからないことなどを自分から話さなかったり、伝えなかったりする“発信しない”子どもの事例を取り上げます。保育者としてこの発信しない子どもに目を向け、支援していくこともとても大切なことです。

今月の事例『ボーっとしていることが多く、活動にのれないAちゃん』

Aちゃんは、年長組で比較的大人しいタイプの園児です。先日もみんなで園庭で遊んでいたのですが「あれっ、Aちゃんはどこで遊んでいるのだろう・・」と一瞬探してしまうこともありました。
お雛様の製作の時間、やり方を説明しているのですが『心ここにあらず』といった感じで園庭のほうを一人ボーっと見ていました。気付いた時には名前を呼ぶようにしているのですが、なかなか手ごたえは感じません。結局、最後には「先生、私は何をすればいいの?」と言ってきました。
また、説明をしている最中にいきなりクレヨンで勝手にお花の絵を描き始めたりします。さらに、忘れ物が多いのです。さよならの挨拶の直後にはなるべくAちゃんに話しかけ、確認するようにしています。しかし、やはり次の日は決まって「先生・・、ビニール袋忘れました・・」と伝えてきます。
無くし物も多く、クレヨンに至っては、今では半分くらいになってしましました。
こんな状況が毎日のように続きます。
みなさんのクラスにもこんな子はいませんか?

皆さんはこのようなお子さんにはこのような対応をしますか?考えてみてください。
  • 「何回言ったらわかるの!先生の話をちゃんと聞きましょう」と注意をする。
  • 対応にあきらめて一つ一つ先生と取り組む。
  • 「話を聞いていないほうが悪い」と一方的に放っておく。
  • 本人の「やる気」の問題にする。
  • 忘れ物や紛失物が多いことを保護者(主に家庭環境)のせいにし、何もしない。
Aちゃんはどうしてそのような姿なのでしょうか?
  • 様々な刺激をうまく受け流すことができない。
  • たくさんの刺激から必要なものを選べない。
  • 見通しをもって活動に取り組めない。
  • 先生の言葉を理解する力が弱い。
  • 自分が思うように話すことができない。

などが挙げられるのではないでしょうか。皆さんはどう思いますか?

さて、この様な子は、どんな子なのでしょうか。
Aちゃんを保育しながら、私なりに対応を考えてみました。

【手立て&ヒント】
このような特性をもっている子どもにはいくつかの共通点があります。例えば、前述のように『物事の優先順位を決められない』『注意を持続できない』『口数が少ない』『常に自信がないように見受けられる』などが挙げられます。これらのなかにAちゃんの姿もいくつかあります。

○「情報を収集するところからスタートしましょう」

Aちゃんの活動への集中できる時間をリサーチしましょう。集中している時間をベースにいろいろな活動を組み立てていけるようにしたほうが良いでしょう。次に『のりを使う製作』『折り紙の製作』など製作内容によって取り組める時間に差がないか情報を集めます。あわせて、好きなことは何か、興味・関心は何かを調べましょう。これらをベースにして活動内容を整理していくと良いと思います。

○「環境面&保育展開の整理をしましょう」
  • 工程をわかりやすいようにホワイトボードに『(1)~ (2)~』と書き出していく。
  • 窓際の席ならば移動し、担任の近くに席を移動する。
  • 机の上には余計なものを置かない。
  • →使用物(画用紙、はさみ、のりなど)は直前に渡す。
  • 活動を細切れにしていくつかの段階を設定する。
    (Aちゃんが集中できる時間が10分ならば10分ごとに区切り、作業を3つに分ける。結果30分取り組めるようにする)
  • 「Aちゃん、ここまでいいかな?」「Aちゃん、ここを折りますよ」などそわそわしてきたらAちゃんの名前を呼ぶようにします。
  • 製作活動への苦手意識を軽減するため保育者が途中までの工程を行い、後半部分は子どもが行い“完成”させ、達成感や成就感を味わわせましょう。
  • 完成のイメージを抱きやすくするために、さりげなく出来上がりの作品を見本としてAちゃんの机の上に置いておきましょう。
○「園と家庭が協力しあう関係をつくりましょう」

忘れ物を減らすには園と家庭が協力する必要があります。毎日持っていくものは保護者に「是非、登園前にAちゃんと一緒に持ち物を確認してください」と伝えるのも良いと思います。また、提出物など不定期な物に関しては担任がAちゃんにメモを持たせ、降園後保護者に見せるように伝えます。しかし、メモの『存在』を忘れてしまうこともあるため、保護者から「今日は先生からのメモはない?」と声をかけてもらうと良いでしょう。ここでワンポイントです。Aちゃんのようなタイプには忘れ物をした時の叱責を避け、忘れ物をしなかった時に褒めるほうが『やった!』という気持ちが芽生え効果的です。

○「良い部分を引き出す視点も持ちましょう」

Aちゃんのようなタイプの子どもはとても素直で優しい性格の場合が多いです。その季節の花を表情豊かにみつけ「先生!○○が咲いてる!」と伝えてくる姿も多くみられます。また、弱い人を見過ごすことができなかったり、優しい気持ちを素直に表現できるタイプが多くみられます。自由遊び中に、泣いている友だちに素早く気付き、頭をなでたり、生き物への世話を丁寧に行ったりする姿があると思います。この部分への評価も同時にすすめ、場合によってはクラスメイトの前で「Aちゃんは○○だね!」と認めることも意識していきましょう。

次回の事例は"『友だちに乱暴をしたり、かんしゃくを起こすB君』"です。

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