TOP > 研究分野 > 発達支援研究分野連載コラム:「気になる子」のことをもっと知ろう! > 第6回 "地域機関との連携"

研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第6回 “地域機関との連携”

2009年12月1日

 障がいがある子どもとその保護者に対してより適切な支援を可能にするためには、地域の機関との連携がポイントになってきます。辞書によると連携とは、“連絡をとって一緒に物事をすること”とあります。では保育者にとって“連携”とは、どういう意味合いをもつでしょうか? 「チームワーク」、「チームプレー」、「コラボレーション」といったイメージが浮かんできます。

 そこで今回は、こういったキーワードを念頭に置きながら、保育者個人の意識からスタートできるネットワーク作りの進め方や、園とその地域の専門機関との連携の進め方などについて、様々な側面から述べていきたいと思います。

なぜ、「連携」が必要?

 日々保育者は子どもの生活をサポートし、ひとりひとりを理解しながらクラス運営をしています。そのなかで、特に障がいがある子どもの理解や具体的な手だてに関して、迷ったりわからなかったりすることも多いのではないでしょうか。さらに子どもだけでなく、家庭環境が複雑だったり、保護者自身が精神疾患を抱えていたりなど難しいケースもあり、対応に苦慮することが多くあります。今保育者はより広く深い視点で、複雑な事例に対応するスキルを求められています。そういう力をつけていくには保育の世界だけでは限界があり、関連する専門機関とつながって、そこから学ぶことが必要なのです。

 例えば、幼稚園・保育園以外の専門機関において指導を受けてきた子どもに関して、園側からその指導内容を聞き取りに出向いたり、実際に指導している場面を見学したりするというのもそのひとつでしょう。園と専門機関とが連携することは、より質の高い保育を実践することにつながり、障がいの有無に関わらず子どもが育っていく礎になるのです。

 ここで言う関係機関とは、主に次のような機関が挙げられます(地域によって呼び方が異なる場合があります)。

  • 「発達の相談をする発達健診機関(保健所・保健センター・病院」
  • 「個別に指導をする専門療育機関(児童福祉施設・小児療育センター)」
  • その他→「障がいのある子どもをもつ親の会・支援組織(NPO)・児童相談所 など」

◎発達障がいを診るのは小児精神科・神経科(てんかんをはじめとしたけいれん性疾患、脳性まひ、ダウン症など小児神経疾患を対象とする)、児童精神科(発達障がい全般のほか、適応障がいや摂食障がいなど精神的障がいを対象とする)という分野の専門医です。

「療育機関」との連携

 障がいのある子どもがクラスにいる場合に、身近な存在となるのが療育機関です。子どもがどのように療育機関に通っているかその状況はさまざまなので、主なパターン別に見ていきましょう。

  • パターン(1):園生活がベースで、週に1~2日療育機関に通園している。
  • パターン(2):療育機関を一度“卒業”して、新年度から毎日登園する。
パターン(1)の場合

園の担任は子どもが療育機関で過ごしている姿を見学し、どのような指導を受けているかを知る必要があります。またできれば、療育機関の指導者も子どもの園生活の様子を見て、双方に意見をやりとりすることで理解が深まっていくことが望ましいでしょう。
以前、なかなか私の声かけが理解できず、いつも困惑した表情を浮かべる子どもがおり、よりよい声かけがないものか試行錯誤をしていました。そんなとき療育機関の指導者が園生活を見に来て、「○○ちゃんは電車が好きなので電車に例えて伝えると比較的理解しやすいようです。例えば、急がなければならない場面では『特急で!』と言ったら、理解して素早く行動をしていました」とアドバイスをいただきました。このように小さなことでも専門機関の指導員から学ぶことで、その子の発達にふさわしい新たな指導の手立てを得ることにつながるのです。

パターン(2)の場合

前年度までの指導方法などについて、できるだけ段差がないよう連絡を取り合い、具体的に保育に役立てましょう。できれば入園が決まった時点で素早く園側から投げかけ、話し合いの場を設定するほうが時間のロスが少ないと思います。その際には専門機関と連携をする旨を保護者に伝え、了解を得ましょう。
子どもの情報を入手することはもちろんですが、保護者についても専門機関から情報を得ておくとよいでしょう。情報とは例えば、“わが子の障がいに対する捉え方”“集団に対する考え方”などが挙げられます。障がいの有無に関わらず保護者は、自分の子が園生活になじめるか、友だちができるのかなど、入園前に不安と緊張が強くなります。障がいがある子の保護者の場合は、その不安がさらに大きいものになっているでしょう。また、入園するにあたって安心して相談できる相手がいないという場合も多くあります。事前に保護者の心情・心境をくみ取っておくことは、これから関係を作り、子どもをどのように支援していくかの話し合いを進めていくうえで必要なことです。この点を踏まえながら新学期前に職員会議を開き、なんらかの対策を講じることもできるでしょう。

パターン(1)と(2)に共通して言えること

“集団”がその子にとって良い刺激になっているか、体力面なども考慮して無理がないかなど、その都度振り返る時間を設けます。また、集団生活と個別指導(小集団での指導も含める)のバランスについても園内でこまめに話し合い、必要があれば再度療育機関と連絡をとって協議し合いましょう。

より広いネットワークを作るために

 ここまで「連携」の重要性や意義について述べてきましたが、残念ながら障がいがある子どもとその保護者を支え見守るしっかりとしたネットワークが構築され、機能している地域はまだまだ少ないのが現状です。しかし、気になる子の対応は困難を極めてから他機関と連携をとり始めても遅いのです。その瞬間にもその子どもは毎日登園し、成長していくのですから……。ネットワーク、人脈がシステムとしてないのならば“自分で作っていこう!”と考えを切り替えることも必要です。そこで以下にいくつかのポイントを挙げてみます。

研修会や事例研究会に参加する

2007年に本格的に特別支援教育が実施され、発達障がいに関する様々な研修会や事例研究会が各地域で行われています。園に届く案内や療育機関のパンフレット、保育雑誌のお知らせコーナーなどをこまめにチェックして、積極的に参加しましょう。
園によっては園長先生や主任があらかじめ回覧する内容を選別することがありますから、事前に特別支援教育に関心がある旨を伝え、回してもらいましょう。
そういった研修会は保育者としての知識やスキルを深める場であるとともに、人とのつながりを作る場になり、これがネットワーク作りの一歩となります。話をする機会に出会ったら、ぜひ自分が抱えている悩みや考えを発信しましょう。また、このような場は様々な職種の人と知り合う絶好のチャンスです。参加者はもちろん、講師にも話しかけて個人同士がつながるきっかけを作りましょう。

小さなきっかけを大きなつながりにする

話を進めていくなかで、現在抱えている保育の悩みや他機関とのネットワーク不足を伝えていきましょう。そして「また勉強させてください」「何かあれば連絡してください」と伝え、連絡先を交換し、発展性のある関係を築きましょう。
こうした流れで手に入れた人脈は、互いに“連携したい”という強い気持ちで結ばれているため、何かあったときにもパッと顔が浮かびます。そこから「今度私の知っている作業療法士を紹介しましょう」「保育者で同じような悩みを抱えている先生を知っているので、今度この研修会に行きませんか?」というように、つながりが深まっていくのです。
このつながりは個人レベルのネットワークで、システムとしてのネットワークと呼べないものかもしれません。しかし双方が必要になった際に連絡を取り合い、相談し、さらには解決策まで出し合えるという、同じ姿勢でつながっているとても心強いネットワークとなります。

地域の機関を取り入れたネットワーク作り

さらに、個人のネットワークを構築しながら、より広くそのネットワークを活用できるものにするように動いていくということも大事です。自分の地域の専門機関や組織と連携し、発達障がいのある子どもとその保護者にとって安心して活用しやすく、その子の成長を見通しをもって継続して関われるネットワークとなることを念頭において動きましょう。
ここでポイントになるのは自分のできることとできないことをはっきりし、互いの役割を押し付けあわず、双方の行動が見えるようにするということです。そうすることによってそれぞれの役割が明確になり、「自分がやるべきこと」=「責任」が明確になります。
また、専門機関も園との連携を望んでいます。園とつながることでどのような考えで保育をしているのか、どのような保育者がいるのかなどの情報を得るきっかけとなります。双方にとってメリットのあるつながりを、積極的に構築していきましょう。
これまで私も、「思い」を「思い」に終わらせないために「動いて」きた今、素晴らしい「仲間」とつながっています。そして、その仲間の存在がネットワークを維持し続ける活力となっています。悩んでいるのは自分だけではない、と励まされる存在でもあります。園内で、そして園外でもこのようなつながりを広げていけたら、心強いと思いませんか?

今月の元気モリモリ先生のQ&A

Q: 1人でクラス担任をしているのですが発達障がいの疑いがある子がいて、他児とのバランスをとりながらどこまでその子に関わってよいか自分でもわからなくなります。今はほかの先生と相談をしながらやっているのですが、これという答えが見出せないままです。個別対応の必要性は理解しているつもりですが……。

A:集団で保育をしていると、その子ばかりに目を向けているわけにはいかないですね。就学前であるならばなおさら困難です。しかし、気になる子どもへの対応に追われてしまうということも現状としてあると思います。障がいがある子にじっくり対応していたら「いつも温厚でけんかをしないA君が、けんかすることが多くなった」「排せつを失敗する子が出てきた」などといったことはありませんか?
気になる子どもに対応することはもちろん必要ですが、クラスの担任である以上、クラスの子どもたち“ひとりひとりの必要に応じて関わる”ということが保育の原則です。そこで保育全体の流れを妨げない範囲で、その子に応じた関わりと手立てを考えましょう。
ポイントは、気になる子どもにいつもべったりすることではなくて、必要に応じて最小限のサポートをし、後は集団で支えるといった心積もりで保育をするということです。「担任が気になる子どもと相性の良い友だちを把握し、(その子に)困っている時に声をかけてもらう」「特別な支援の必要な子どもの座る場所や使用する物をクラスメイト全員で覚え、それぞれが気づいたときにその子に支援をしながらスムーズに活動に取り組めるようにする」など、友だちにもサポートしてもらいながら保育をしていきましょう。このことは、子ども同士が育ち合うことにもつながっていきます。

参考引用文献
  • 『「気になる子」の保育と就学支援』 編著者:無藤隆 東洋館出版社
  • 『保育士のための気になる行動から読み解く子ども支援ガイド』監修:藤原義博 学苑社
  • 『わかってほしい!気になる子』監修:田中康雄 学研

編集協力/岡田明子

第7回のテーマは、"クラスメイトへの対応と学級経営(1)"です。

←前ページに戻る次ページにすすむ→

▲このページのトップに戻る