TOP > 研究分野 > 発達支援研究分野連載コラム:「気になる子」のことをもっと知ろう! > 第5回 "クラスの保護者の理解を得る"

研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第5回 “クラスの保護者の理解を得る”

2009年11月1日

 前回は障がいがある子どもの保護者と保育者の関係づくりについて考えました。今回はそれらを踏まえた上で、障がいがある子どもの保護者とクラスの保護者との関係を考えてみたいと思います。

クラスの理解者を増やしていくために

 発達障がいのある子どもたちは、例えば相手が嫌がっているのがわからずに関わっていってけんかになってしまうなど、相手の表情から感情を読み取ることができなかったり、状況の理解が苦手だったりしてクラスの友達とトラブルになることがあります。ときには相手の子どものけがにつながってしまい、保護者同士のトラブルへと発展していくケースも少なくありません。

 子どものけがに対して、「よくあることです。うちの子も悪かったし」と比較的寛容に受け止める保護者もいますし、「この傷はだれとけんかしてできたものですか!?」と感情をストレートに表す保護者もいます。いずれにしても、我が子が傷つけられて気持ちが良い保護者はいないでしょう。またけがをさせてしまう子どもがいつも同じの場合、「うちの子は、いつもA君にけがをさせられる。先生は何をしているのだろう?」「A君は乱暴。お母さんのしつけはどうなっているの?」などの感情がわき上がることもあります。

 発達障がいの場合、パッと見た目ではわかりづらく、周囲の理解を得にくいということがあります。しかし、障がいのある子も周囲の子どもたちも共に育ち合うクラスを作っていくうえで、クラスの理解者を増やしていくような働きかけをしていくことはとてもたいせつではないでしょうか。そのために日々の保育のなかで保育者にはどんなことができるか、考えてみましょう。

お便りを活用する

 担任は日ごろからクラスだよりなどを活用し、子ども同士のトラブルやその背景に見られる子どもの発達過程について伝えていきましょう。例えば2歳児ぐらいだと、言葉が思うように出てこないがゆえに感情を抑えきれず、周囲の子どもにかみ付いてしまうことがあります。このように「起きてしまったトラブルの背景にある子どもの育ちを、保育者がどう読み解き、対応したのか」ということを、保護者に伝えていきましょう。そのことで、子どもたちはそれぞれにさまざまな育ちの過程を見せるということ、また保育者はそういったことを踏まえ、プロとして対応しているということが少しずつでも伝わっていくと、保護者の受け止め方にも変化が見られるかもしれません。
また、このようなお便りでの発信は、子どもの個人名や個人の特定可能なトラブルの掲載に関して慎重な検討が必要なことは言うまでもありません。

理解者をつなぐ

 発達障がいがある子どもの保護者の場合、クラスの保護者の話し相手がなかなか広がらないことがあります。クラスの中には、自分の子どもに障がいがなくても「育てにくさ」を感じ、その悩みに共感する保護者もいるでしょう。なんとなく同じ悩みを抱いていそうな保護者を保育者がさりげなく仲介することで理解者を増やしていくことも、ひとつの方法です。

トラブル時の「迅速」で「誠意ある」対応

 また、実際にけがなどのトラブルが起こってしまったとき、保育者がけがをさせられてしまった子の保護者にどう対応するかが、クラス全体の理解を大きく左右することもあります。その対応のポイントを挙げていきましょう。

保護者同士での解決を避ける

 保育者が関知しないところで、保護者同士がぶつかり合ってしまうような事態は絶対に避けたいことです。そうならないために、トラブルがあったその日のうちに保育者が取るべき対処を初めに述べたいと思います。

  • 誠意をもって謝罪する
    子どものけんかによるけがで問題がこじれてしまうのには、園側の説明不足などうまく伝わらなかったことに原因があることが多いでしょう。保育者は、たとえ小さなけがでも「たいしたことではない」「お互いさま」などと片付けてしまうことは慎みたいものです。保護者に伝える際には細心の注意を払い、まずは誠意をもって謝罪することが大切です。
  • けがをさせてしまった子どもについて話す際には、慎重に
    相手の子どもの状況を必要以上に説明すると、その子を弁護しているような印象を与えてしまうことがあります。例えば、「A君に悪気はない」「A君も良い子だから」などとけがをさせた子どものことを伝えても、場合によっては逆効果になってしまいます。「わが子を傷つけられた」ことに心を痛める保護者の気持ちに寄り添った姿勢を心がけましょう。
  • 子ども自身が納得して降園できるように
    どうしてこのような状況になってしまったか、相手の気持ちはどうだったか、などけがをさせられてしまった子が(その内容を)理解し、納得して降園できるように話をしましょう。子どもの様子が保護者の印象を大きく左右します。子どもが納得できれば保護者も安心し、問題もそこまで大きくなりにくいでしょう。
チームでの対応

 保護者同士のトラブルが大きくなった場合、担任が一人で解決しようと思っても限界があります。そのような時は、園長などが間に入りましょう。面談をするにしても、懇談会をするにしても保育者がチームを組んで取り組む必要があります。

 このようなことを日々の保育で実践していても、場合によっては予想以上にトラブルが大きくなってしまうこともあります。では、園に双方の保護者を呼んで事情を聞くというのはどうかというと、初期段階はその方法はできるだけ避けたほうがよいでしょう。状況や気持ちの整理ができていないところで話し合っても、どちらかが一方的に責められたり、双方が正当性を主張することに終始したりしてしまうことになりかねないからです。

 話し合いが必要になったときには、まず保育者が双方の保護者と別々に面談をします。けがをさせてしまった子の保護者から相手方に連絡をしたほうが良い場合には、園からその旨を前もって相手方にお知らせするなど後押しをして関わっていきます。決して途中で投げ出さず、園での責任として問題を解決することを双方に伝え、粘り強く話し続けていきましょう。

一歩踏み込んだ対応が必要なとき

 同じ子どもによるトラブルが頻発し、その子の保護者がクラスの保護者の非難の的になってしまっているといった、深刻化している状況に悩む保育者の方もいるのではないでしょうか。その場合、トラブルを起こしている子どもの保護者との連携が不可欠になってきます。保護者の心の準備段階によっても対応が違ってきますので、タイプ別に対策を考えてみましょう。

(1)「自分の子どもの障がいについてお便りなどで公表して理解を求めたい」と思っている保護者の場合

お便りで障がいの一般的な特性を伝え、それとセットでクラスの一員として友達と共に生活し、関わり合いを通して成長するということをきちんと伝えましょう。くれぐれも障がい名や特性のみが印象に残り、逆に「あの子は障がいのある子だから」といった受け取り方をされてしまうような伝え方にならないよう、慎重に内容を考えます。
また、公表するお便りは必ずその保護者や園長、主任に見せ、内容の了解を得ましょう。なお、保護者自身がお便りの文章を作成する場合も、保育者が事前に確認し、コミュニケーションをとりながら進めていきます。
このようなお便りを出した後の保護者のリアクションはさまざまです。また、障がいのある子どもに集中的に乱暴されてしまう子どもの保護者は、複雑な心境になることも多いです。「A君のことはわかりました。いろいろな子がいて当然だし、園はそのような子も一緒に生活をしていく場所なんですね」と理解を示したとしても、「わかってはいるけど、こう何度もけがをさせられるとやっぱり心配……」と感じることもあると思います。さらに「衝動性が強い子の近くであそぶのは心配です」、「あの子に補助をする先生をつけてください」と訴えてくる保護者もいるでしょう。
そういった保護者に対して、保育者はまず“子どもを傷つけてしまったこと”“未然に防げなかったこと”“不快な思いをさせたこと”を心から謝罪しましょう。そして、今後園が考えている具体的な対応策を説明します。ここでは“具体的”というところがキーワードです。「頑張ります」「気を付けます」で終わるのではなく、例えば「2人にならないよう配慮します」「A君が落ち着ける場所を用意します」など具体策を伝えます。そして「このような対応を考えています。少し私に時間をいただけませんか?」と話し、その後も面談などで実践の報告し、連絡を取り合いながら相談を重ねていきます。

(2)「自分の子どもの障がいについて受け入れようとは思ってはいるものの、まだクラスの保護者には知られたくない」と思っている段階の保護者の場合

(1)と同様に、けがをさせられてしまった子どもの保護者に対して謝罪し、園での対応を具体的に説明します。その後も保護者と連絡を取りながら丁寧に接していくことが基本です。ときには、障がいのことを話したほうが相手の保護者に理解しやすい場合もあるでしょう。その場合は当事者の子の保護者に事情を説明し、自分の子どもの障がいや特性についてどこまで話をしてよいかの「範囲」を相談しましょう。そしてその「範囲」内で相手の保護者に説明していきましょう。

最後に現場で一番多く、かつ困難な「気になる子どもでありつつ、保護者はそのような認識がなく、その子がトラブルを頻発させてしまっているケース」について述べたいと思います。
まずその保護者と密なコミュニケーションを図り、保護者の現在の心情を探りましょう。その上でトラブルのいきさつ(たたいてしまった原因など)を丁寧に説明した後、言葉を慎重に選びつつ「A君もどうしてよいかわからない様子です。ともに良いアドバイスを得るための手段を考えませんか?」などと話し、相手の保護者の様子を見ながら専門機関の話題提供をしてみるのもひとつです。ただし、ここでの無理強いは絶対禁物ですので話を進めるのはくれぐれも慎重に行ってください。

今月の元気モリモリ先生のQ&A

Q:年長組のB君は製作もかけっこも保育室の移動も最後になってしまいます。よく観察すると、周りをキョロキョロして行動することが多いようです。一対一で話をすると理解しているように思うのですが……。マイペースなだけでしょうか?

A: B君の姿から読み取れることとして、B君は「見通しをもてない活動への不安が強い」「周囲の状況を理解し、みんなのペースに合わせるのが苦手」という困難さをもっているようです。周囲の想像以上に本人は不安を抱え、困っている可能性が高いと思います。自信がないように見られる場合は、保育者がそばで「OK」「大丈夫」などと声をかけると良いのではないでしょうか。また、見通しをもてるようにする方法として、一日の流れや製作の手順などが目で見てわかるようにすると効果があるかもしれません。例えばホワイトボードを活用して、手順を書きながら進める、もしくはあらかじめ手順を書いておくなどといった援助です。また、わからなかったり、困っているときは「わかりません」「教えて」と友だちに伝えるように促し、友だちに言えない場合は保育者に言いにくるように伝えましょう。それでも難しい場合は、紙に困った表情の絵をかいてある『困ったカード』、手をあげている絵がかいてある『教えてカード』を作り、その子が持ち歩くようにすると、心理的安定につながるかもしれません。その子に合うやり方を探してみてください。

参考引用文献
  • 『気になる子』の保育と就学支援』 編著者:無藤隆 東洋館出版社
  • 『特別支援教育の理論と実践』 編著:特別支援教育士資格認定協会 金剛出版

編集協力/岡田明子

第6回のテーマは、“他機関との連携”です。

←前ページに戻る次ページにすすむ→

▲このページのトップに戻る