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研究分野:発達支援研究分野

発達障がいの理解とサポート 「気になる子」のことをもっと知ろう! 幼稚園教諭 特別支援教育士 守 巧

第2回 “集中・安心を促す保育環境のつくり方”

2009年8月3日

活動に集中できる保育室とは?

 外からの情報や刺激を自分の意思で思うように選択したり、調整したりすることが苦手な子どもには、まず保育室内の環境を整えることが大切になってきます。例えば、子どもの視線の高さで何が目に入ってくるかを見直してみます。体操座り(三角座り)をしているときや、いすに着席しているときに何が見えているのかを確認してみるとよいでしょう。保育者がいつも立っている(座っている)背景の壁面は、ゴチャゴチャしていませんか? おもちゃは整理されていますか?
集中することが苦手な子どもの場合、次のような点で困難さが見られます。

  1. 刺激の選択(周囲の情報がすべて入ってきてしまう)。
  2. 集中力の維持(目につくもの、耳に入るものなどの刺激にすぐ反応してしまう)。

具体的な場面の例で考えてみましょう。

  • 製作に取り組んでいる場面で…(園庭から楽しそうな声が聞こえている)
    「あっ!鬼ごっこしてる」と出て行ってしまう。
  • 先生が話をしている場面で…(横に置いてある飼育ケースでクワガタが動いている)
    「クワガタが動き出した!」と、そちらに夢中になってしまって、まったく話を聞いていない。

子どもによっては、「 」の中の言葉が実際に口に出てしまう子もいます。これでは活動に取り組みたくてもなかなか難しいですね。再確認ですが、これら一連の言動はその子が望んでしていることではなく、本人のコントロールできないところでこの現象が起きているのだということを押さえておきましょう。

環境づくりの具体的な工夫や配慮

 まず、集中が困難な子どもが過ごしやすくなるような、保育室内の環境設定におけるポイントをいくつか挙げていきます。園によって、環境設定の考え方はいろいろあると思いますので、自分の園やクラスで実践できそうだなという要素を取り入れてもらえればと思います。キーワードは“すっきり、シンプルに”です。

集中しやすい環境づくり
  • 保育者が話をする背景の掲示物や壁面を、極力控える。「色(濃い色は避け、淡い色調にする)」や「種類」を1~2つまでにするということを意識するだけでも、ずいぶん違ってくる。
  • 活動中はおもちゃがなるべく視野に入らないよう、カーテンで覆うなど、気になりそうな物は視野から外す。
  • 座る場所を窓際の席以外にする。
  • クラスの約束事やルールを、確認しやすいところにはっておく。

 次は、安心して過ごせる環境作りを具体的に説明していきます。ただし、広くとらえると障がいのある子どもへの対応ということに限らず、“どの子に対しても考えておきたい保育環境における配慮”なので、自分が保育をする上で押さえておきたいポイントとして考えてみてください。

キーワードは“見てすぐわかる”です。

危険を防ぐ環境づくり
  • 危険なものは目に入らないところに置く。欲求を抑えることが苦手なタイプの子どもだと、はさみやカッターなどを触ったり持ったりと危険な行為が見られがちになり、その分、保育者が叱責してしまう状況も多くなってしまう。
  • 積み木やはしごなど高いところに、子どもが登らない工夫をする。危険ということを認識していても“登って、飛び降りる”という行為をしてみたくなることがある。設備上はしごなどを常設している場合は、目で見てわかりやすいように『×』とかかれた看板を付けたり、例えば色で反応できるように、棒の色を赤にするなどの工夫をする。
整理や片付けがしやすい配慮
  • 分類することや場所を把握して整理することが苦手な子どもには、どこに何を入れるのかがわかるように、片付ける物のシンプルな絵や実物を大きくした写真などを側面にはる。うまく進められたときには「きれいになったね」と保育者が声をかけ、子どもが片付けの「終わり」を意識し、気持ちの良さを味わうことができるように援助する。
落ち着ける空間づくり
  • 目や耳から入る刺激を遮断できる「ちょっと落ち着ける場所」を設ける。集団生活では、不安になったり興奮したり、イライラすることが多くなる子がいる。そのような場合は、1人になって心を落ち着かせられるような場所を確保しておくと、少しストレスが軽減する。職員室の端や廊下の突き当たりなどがお勧め。

最後に、発達にアンバランスさや遅れがある子どもにとって一番大事な環境は、「人的環境」です。多動性や衝動性、コミュニケーションの弱さ、人と共有しがたいこだわりをもっているといった姿は、クラスの友だちの理解を得ることが難しく、子どもたちは、頻発するトラブルに小さな胸を痛めています。そんなとき、「先生なら僕の気持ちをわかってくれる」「困ったときは先生が一緒に考えてくれる」といった情緒的なつながりがあれば、どれだけその子は救われるでしょうか。保育者は、その子が安心して身をゆだねられる存在であるよう心がけたいものです。

今月の元気モリモリ先生のQ&A

Q:ニコニコしながら友達を突き飛ばしてしまったり、たたいたりするなど、こちらがついイライラしてしまう行動をするのですが ・・・。

A:場の状況を理解したり、相手の表情から感情を推測したりすることが苦手な子どもがいます。「ニコニコしながら」という描写から想像すると、その子にとって悪気はないのだと思います。考えられるひとつの要因としては、以前に自分がした行動(突き飛ばしたり、たたいたり)が、「相手との楽しいやりとり」→「友だちとの楽しい関わり方」としてインプットしてしまったのかもしれません。

  これらの行動への対応のひとつとして、見ていて危険な場合は事前に保育者が体を入れて、その行為をストップしてみてはどうでしょうか。また、言葉でのやりとりが可能な子であれば、行為の裏側にある思いや考え(「友だちとあそびたい」など)を引き出しながら、本人と周囲の友達に伝えましょう。そして、関わる適切な行為を保育者が具体的にやってみて、見本にすると理解しやすいと思います。「何回言ったらわかるの!」「ダメだよ」などの声掛けは、本人が自分の感情を相手に言葉で表す機会を奪ってしまいますし、また、周囲の子どもたちにとっても、その対応が見本となってしまうといった影響が考えられます。

参考引用文献
  • 『発達障害を持つ子への保育・子育て支援』 編著者 湯汲 英史 明治図書
  • 『発達が気になる子へのかかわり方&基礎知識』 編著 グループこんぺいと

黎明書房

第3回のテーマは、"日常の生活の中でのケア"です。

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