お役立ち教育情報 あかはなそえじ先生の 院内学級の教師として学んだこと【第9回】

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2021.6.10

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとして関わるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族との関わり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

 

傷つきからの回復に必要なこと③ 日常、将来への拡充(かくじゅう)

「安心、安全の確保」「選択(せんたく)と挑戦(ちょうせん)」の次、3つ目に行うことが
日常、将来への拡充」です。
これは、過去、現在、未来の自分に、連続性を持ってもらうということです。

~現在を大切に~

傷つきが大きい子どもは過去を語ることをためらいます。現在を大切にできません。
そして、未来に対するイメージを持てません。
そこで、今の自分を大切にし、過去の自分を「まあ、いいか」と思えるように、その上で未来を考えられることを目指して関わっていきます。

院内学級に初めて来た子どもたちに、必ず伝えることがあります。

「ここは学校だから、学習をします。遊びもします。でも、みんなの体を1番、大切にする学校です。だから、つらくなったり、痛みが出たり、つかれたりしたら、すぐに伝えてください。部屋にもどりたくなったときも、すぐに伝えてね。看護師さんに連絡(れんらく)をしますから」

するとだれもがホッとした表情を見せます。トイレや水分補給のことも伝えると「今の自分の状態をわかってくれている」と、とても安心するようです。

このような子どもたちが興味を持ち、やりとげられそうな課題を用意し、やってもらいます。
今の自分の状態でもできることがある、学校でみんながやっていることもここでできるんだ、挑戦してみることもできるし楽しむこともできる。子どもたちが、そう思える取組をしてもらいます。
そう思えるようになったころ、伝えることがあります。

「せっかく入院したんだから、今しかできないことをやろうよ」
「ここだから、できることを見つけてしようよ」

すると子どもたちのエネルギーが変わります。学習に対しても、遊びに対しても、治療(ちりょう)に対しても、前向きになる姿が見られます。

 

~過去の自分と向き合うために~

小さいころから病気をかかえていたり、命に関わるようなけがをしたりすると、なかなか今までのことや、そのときのことを思い出したくない場合があります。
小さかったころの自分を否定している場合もあります。なんどもつらい病気をくり返しているお子さんは、いじめを受けた状態になります。自分の体が自分にブレーキをかけ、命をおびやかすことさえあります。
そんな自分を好きになるのはとても難しいことなのです。

子どもたちとの会話の中で過去の話を聞いていると、しだいにそのときの心持ちや感情にふれさせてくれるようになります。

慢性疾患(まんせいしっかん)による臓器移植を経験したお子さんが「このことがあったから、今の自分があると思っている」と話してくれたことがあります。「いつごろ、そう思うことができたの?」と私が聞くと、「そうだなあ、けっこう早かったかな」と言いながら、小さかったころの話をしてくれました。両親と周囲の人たちが、自分を愛し、大切にしてくれていたんだと気づけたことが大きかったそうです。

 

~未来の自分を想像して~

こんなふうに、過去の自分も「まあ、いいか」と受け入れられると、次は未来が見えてきます。
子どもたちの中にエネルギーがたまってくると、会話の中に「未来」が顔を見せてくれるようになります。いや、もしかすると、子どもたちの中にはどんなときでも「未来」があるのかもしれません。

教室で、男の子が家の模型を作りながら「建築家のお父さんをつぐ」と、将来のプランを話してくれました。
ある女の子は、病状が少し悪くなったときでも「算数だけはやりたい」と、私たちがベッドサイドに行くことを楽しみにしてくれていました。
子どもたちと明日や将来の話をすることができたころ、退院の予定が決まることはよくあります。

自分は自分のままでいていいんだよ」と思える手伝いを続けていきたいと思いました。

 

第8回はこちら

 


あかはなそえじ先生

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当
1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、
1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。
2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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