お役立ち教育情報 あかはなそえじ先生の 院内学級の教師として学んだこと【第4回】

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2021.04.01

院内学級の教師として、赤鼻のピエロとして関わるなかで、笑顔を取り戻し、治療に向かう意欲を高めていく子どもたち。その経験をもとに、子どもとの接し方や保護者・家族との関わり方、院内学級の必要性、教育の重要性などについて語ってくれます。

第4回 もし大人になれたら・・・

私が院内学級の担任になった、2006年の4月に出会った女の子が教えてくれたことがあります。

彼女は当時、小学校4年生でした。
頭部の手術を、おさない頃からくり返し行っていたお子さんです。
詩を書くことが大好きで、ノートに次から次へとうかんだ詩を書いていました。
「あなたは、とてもすてきな詩を書くね」と私が話かけると、
彼女は「先生、私ね、もし大人になれたら、詩人になりたいの」と笑顔で伝えてくれました。

「えっ、もし大人になれたら……」

それまで、公立小学校の教室で
「あなたの夢はなんなんですか?」「夢を実現させるために、今は何をすべきなんですか?」と、
クラスの子どもたちにつきつけてきた私にとって、「大人になることが当たり前ではない」と
感じている子どもたちがいることを、あらためて認識させてくれた言葉です。
そして、このようなお子さんたちと今後は向き合っていくのだという覚悟(かくご)をさせてくれた言葉でもありました。

 

~支援とケア~

院内学級の担任になって3年ほどたったときに、
多くの子どもたちやお子さんのご家族と関わるなかで、気づいたことをまとめたいと思い、
そこで当時、いっしょに担任を組んでいた先生と
病気をかかえた子どもたちと関わるときに、はずしてはいけない大切なことはなんだろう」と
話し合い、まとめたものがあります。

さいかち学級という名前にちなんで「さいかち10と5つの視点」です。

さいかち10」は「不安の軽減」や「痛みの緩和(かんわ)」などなど。
5つの視点」は「発達を支える」「家族支援(しえん)を支える」などなどです。
これについては、おいおいお話していきます。

「病気である本人はもとより、保護者の方やきょうだいも支えたい。学校関係者や医療(いりょう)スタッフの人たちとも支え合いたい」といつも考えています。
そのためにはケアする人のケアを忘れてはいけません。連携(れんけい)することの基本中の基本ですね。

子どもたちは、先にある幸せのためにがんばるのではなく、今が幸せと感じられるならば、
必ず自分の足で前にふみ出してくれると、関わりを通して感じています。
たとえ病気でも、入院しても、ほかのお子さんと同じように学び続けたい、
何かをできるようになりたい、わかるようになりたいと思っています。その気持ちを支えたいと思うのです。

 

~新しい夢に向かって~

詩を書くことが大好きだった、冒頭(ぼうとう)で紹介(しょうかい)した小学校4年生だった女の子と久しぶりに会うことができ、もう高校生になっていた彼女が私に
「先生、私ね、大学に行って英語を学んで、翻訳家(ほんやくか)になりたいの」と
笑顔で伝えてくれました。
そのときの会話には、もう「もし、大人になったら」という言葉はありませんでした。

なんだかとてもうれしくて、ホッとしたことを覚えています。

 

第3回はこちら

 


あかはなそえじ先生

あかはなそえじ先生・副島賢和(そえじま まさかず)

昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当
1966年、福岡県生まれ。東京都の公立小学校教諭を25年間務め、
1999年に都の派遣研修で東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。
2006年より品川区立清水台小学校教諭・昭和大学病院内さいかち学級担任。2009年ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。2011年『プロフェッショナル 仕事の流儀「涙も笑いも、力になる」』(NHK総合)出演。2014年より現職。学校心理士スーパーバイザー。ホスピタルクラウンとしても活動中。

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