お役立ち教育情報 学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第13回

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2021.2.17

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。
今日は「薄氷」。一般的には「はくひょう」と読みますが、俳句では「うすらい」「うすごおり」と読みます。

第13回 今日の季語「薄氷(うすらい・うすごおり)」(春)

つつと動きて薄氷とわかりけり

(つつとうごきて うすらいと わかりけり)

鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)

一瞬の中の過程

早朝、公園で散歩をしていると、そこにある池がいつもと違うような……。不思議に思って近づいてみると、何かが水面に浮かんでいたり、すーっと動いていたりしています。作者はさらにじっと見つめ、ようやくそれが薄氷(うすらい)だとわかりました。

この句の面白さは二つあります。一つは、五七五に、上で紹介したような小さな物語が織り込まれている点です。薄氷とわかるまでの実際の時間は、一瞬だっただろうと思います。しかし、俳句として詠むことによって、一瞬の中にある過程を、私たちに想像させてくれます

二つ目の面白さは、「つつと動きて」と詠みはじめている点です。動いているものが何なのか、私たちは作者と一緒に、その不思議なものに近づいていくことができます。薄氷とわかったときの、「おお!」という感じ、がっかりした感じ……、読者によって感想は違うと思いますが、一種のドキドキ感が演出されています。

描かれる景色だけでなく、そのときの心の動きまでを読者と共有することができたとき、作品は初めて「いい俳句」として受け入れられるのかもしれませんね。

俳句のキーワード「句またがり」

俳句は、五七五のリズムの十七音を基本の型としています。次の作品は、この型をしっかり守ったものです。

ふるいけや/かわずとびこむ/みずのおと
(古池や蛙飛びこむ水の音 松尾芭蕉)

しかし、今回紹介した句はどうでしょうか? 五七五のリズムでは読みづらかったのではないかと思います。仮に五七五で区切ってみると、次のようになります。

つつとうご/きてうすらいと/わかりけり
(つつと動きて薄氷とわかりけり 鷹羽狩行)

この句のように、十七音ではあるけれど、五七五のリズムの一部が、次の部分にかかってしまうものを「句またがり」といいます。句またがりの効果としてよく言われるのは、リズムを崩すことによって、その句をいきいきと目立たせることができるというものです。


普段、私たちも「わざと〇〇する」、「あえて〇〇する」ことがあると思いますが、ここには積極的に何かをしようとする意図がはたらいています。ここでの考え方に近いものとして、句またがりをとらえることができます。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。春の作品に〈春月の寝息に混じりゆくごとし〉。