お役立ち教育情報 学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第12回

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2021.2.3

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。
今日は立春。今回から季語も春になります。

第12回 今日の季語「巣箱」(春)

さむさうなあたたかさうな巣箱かな

(さむそうな あたたかそうな すばこかな)

対中いずみ(たいなかいずみ)

巣箱の中のぬくもり

春になると小鳥たちが繁殖(はんしょく)を始めます。この繁殖をサポートするために、森や庭先に、巣箱が置かれていることがあります。この句では、見つけた巣箱に対する、作者のまなざしに面白さがあります。

寒さの残る春先、ポツンとかけられた巣箱は、外気を吸い込んで、冷たく、寒々とした感じがします。ここに、「さむさうな」巣箱が想像できますね。
一方で、巣箱は新しい命の誕生の場であり、親鳥がひな鳥を守り育てる奮闘(ふんとう)の場でもあります。小鳥たちにとって巣箱は、家族と暮らす「家」。この家のイメージに、ぬくもりやあたたかさを感じる人も多いのではないでしょうか?
作者は、以上の二つの側面を、目の前の巣箱から見て取り、今回のような表現で詠(よ)み上げたのではないかと思います。

ところで、この句には、ひらがながたくさん使われています。「寒さうな暖さうな巣箱かな」とすると、どこかぎゅっとして、重々しい感じがしますね。ひらがなを使うことで生まれる、柔らかさや温かみが、この句のイメージにも影響しているように思います。

俳句のキーワード「客観写生(きゃっかんしゃせい)」

前回のキーワード「花鳥諷詠(かちょうふうえい)」と同じく、高浜虚子(たかはまきょし)という俳人がつくった言葉です。
「写生」とは、見たものをありのままに写し取ることを言います。写生は、俳句の基本的な作法(さくほう)として考えられています。
虚子は、この写生に「客観」という言葉を付けました。客観とは、「主観(個人的な判断や感情)」の対義語です。客観写生は、特定の立場にとらわれない客観の視点から俳句を作ることを意味しています。

では、俳句に個人の思いを込めてはいけないのでしょうか? そんなことはありません。虚子は、客観を追求することで、作者の思い、つまり主観が作品に浮かんでくると考えました。

そもそも、五七五という短い文字数では、さまざまで、複雑な思いをそのまま表現することはできません。きっと虚子は、複雑な思いを伝えるためにも、客観写生によって、作家独自の視点を見せるほうが、よりよく作者の思いを伝えられると考えたのだと思います。同じものを見たとしても、どこに注目するか、どんなふうに描き出すかは、人それぞれの個性が出るものですから。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。春の作品に〈春月の寝息に混じりゆくごとし〉。