お役立ち教育情報 学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第1回

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お子さんと「ねえねえ、こんな俳句があるんだって」と一緒に鑑賞したり、お月見をしながら、公園の花を眺めながら、季語や俳句を話題にできたりしたら素敵ですよね。自然や言葉を大切にすることで視野が広がり、世の中や周りの人が少し違って見えてくるはずです。

このコーナーでは、27歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していきます。

今日の季語「桃」(秋)

白桃や心かたむく夜の方

(はくとうや こころかたむく よるのほう)

石田波郷(いしだはきょう)

桃に引き込まれた心。その先に…?

あるものを一心に見つめると、ぐぐっと引き込まれるような感覚になることはありませんか? 窓辺かどこか、ぽんと置いてある白桃に意識が引き込まれていく。一方で、周りの景色がどんどんぼんやりとしてくる……。このときの感覚を「心かたむく」と表現しているのでしょう。

ところで、心が傾いた先は「夜の方」。これにどんな意味を読むかは、読者にゆだねられています。文字どおり、窓の向こうの「夜」としてもよいでしょう。でも、私は次のように読んでみたいと思っています。桃に引き込まれていく中、日々の生活や悩み、これまでの思い出、将来……。こうしたイメージが次々と自分の脇を流れていく。まるでタイムトラベルをしながら、最後行き着く先のたとえとしての「夜」。そこには何があるのか。作者は、それを知るために桃を見ていたのだと思えるのです。


うたた寝のあとずぶずぶと桃の肉

(うたたねの あとずぶずぶと もものにく)

柿本多映(かきもとたえ)

「桃の肉」を味わって読もう

この句は、うたた寝から目覚め、まだ寝ぼけたまま桃を食べる人を詠んでいます。
この句の面白さは表現にあります。「桃」や「桃の実」ではなく、「桃の肉」と詠まれることで、桃のみずみずしくジューシーな感じがリアルによみがえってきます。さらに、「ずぶずぶ」という擬音語によって、本能のままに「桃の肉」をむさぼる人の姿が連想できます。その情景は、人間の生命力や、弱肉強食に通ずる世界の「真理」を浮かび上がらせているようです。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。作品に〈校庭のぽんと明るし雪達磨〉。