お役立ち教育情報 学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句 第9回

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2020.12.16

28歳の若さで学研の編集者と俳人、2つの顔をもつ中西亮太が、毎回オススメの季語と俳句を紹介していくこのコーナー。今回の季語は、子どもはもちろん、大人も楽しみたい「クリスマス」です!

第9回 今日の季語「クリスマス」(冬)

へろへろとワンタンすするクリスマス

秋元不死男(あきもと・ふじお)

想像を裏切る

もうすぐクリスマスです。みなさんは何を食べたいですか? チキンやケーキ、ピザなどいろいろなものが挙がりそうです。今回の作品は、クリスマスにワンタンを食べているという、ちょっと意外なシーンが詠まれています。

ワンタンは中華料理の一種で、スープに餃子のようなものが入った食べ物です。ワンタンを食べたことがある人なら、この「へろへろ」という感覚を簡単に想像できるのではないでしょうか? ひたひたになったワンタンの皮が、口の周りを打ちながら、吸い込まれていく感じがいきいきと描かれています。

実感とリアリティーのあるワンタンの描写もさることながら、この句の醍醐味(だいごみ)は、それをクリスマスに食べているというギャップにあります。どことなく寂しい感じがしながらも、「世間に流されてたまるか!」と心を強くもとうとする人の姿が想像できます。

この作品は、私たちが想像する「クリスマス」とはひと味違った価値観を提供してくれるものとして読むことができるかもしれません。俳句は時に、読者の想像を裏切りながら、新しい世界を切り開いていくのです。

俳句のキーワード 「切れ字」

「や」「かな」「けり」など、俳句では「切れ字」と呼ばれる技がよく使われます。多くの場合、切れ字は「~だなあ」というような感動を受け止める意味で用いられますが、その効果はさまざまで、一言で言い表すのは難しいものです。

古池や蛙飛びこむ水の音

(ふるいけや かわずとびこむ みずのおと)

松尾芭蕉(まつお・ばしょう)

この作品で、作者は「や」を使って、古池に読者の想像を集めます。その後、蛙を水に飛び込ませ、「ぴちゃん」という音を導入しています。切れ字は、静かな世界に一音を差し込むための余韻(よいん)を作り出してくれます。

句碑が全国に多数ある。その一つ。

「かな」は、よく一句の最後につけられます。これによって、作品全体に余韻を生み出します。「けり」は強い調子をもっていて、「~だなあ」よりは「~だよな!」に近いかもしれません。

限られた文字数で作られる俳句は、切れ字を工夫して使いながら、注目させたり余韻を生んだりして、句に物語を与えていきます。切れ字を見つけたときには、ぜひ少し時間をかけてその前後の言葉を味わってみてください。句に詠まれる景色が、ゆっくりと立ち現れてくることと思います。。

中西亮太の「学研の俳句おにいさんが解説 読解力が伸びる! 親子で味わう俳句」は、第1・第3水曜にお届けします! 次回もお楽しみに♪


中西亮太(なかにし りょうた)

1992年生まれ。株式会社学研プラスの編集者。大学生のとき、甘い考えでうかつに俳句をはじめる。過去に、第14回龍谷大学青春俳句大賞最優秀賞、NHK-Eテレ「俳句王国がゆく」出演など。「艀」(終刊)を経て、「円座」「秋草」現代俳句協会所属。俳句とは広く浅く長く付き合いたいと思っている。冬の作品に〈校庭のぽんと明るし雪達磨〉。