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スペシャルインタビュー

~ニチレイ会長・経済同友会幹事・文部科学省中教審委員に聞く教育論~ これからの日本に求められる人材、教育界に必要なことは何か? ~「私教育」の復活、科学的な分析と判断で課題解決できる人材を~ 浦野 光人

前編では、経済界が求める「人材像」、また期待される「グローバル」について伺いました。後編は、ズバリ「教育」、「学び」全般についてお聞きします。また冷凍食品業界、最大手代表として「食育」について最後に一言、語っていただきました。
インタビュアー:学研教育総合研究所長 栗山健

後編  「教育」について学校・家庭・地域社会がなすべきこととは?

──「教育」について、お考えがあれば、お聞かせください。

浦野まず、「教育」とはどういう場で行われるか? 公立、私立を問わず一般に学校で行われる「公教育」と、家庭、地域社会などで行われる「私教育」があります。この「私教育」の衰退が最大の問題だと思います。従来、家庭など「私教育」で分担してきたものまで、すべて「公教育」でやろうとすることに無理がきて、かなりのひずみが生まれているのが現状ではないでしょうか? たとえば、倫理的なこと、社会生活していくための一般的なことなどは「私教育」で行われました。今の子どもは「挫折感」を知りません。失敗しないように育ってきています。昔は、小さいころから遊びのなかで、5、6歳も年の差がある集団で「挫折」や「礼儀(ルール)」を学んでいたものです。今はそれがなくなり、だいたい同学年の子と家の中でゲームで遊ぶのが一般的のようです。私教育としての「遊び」の中から学ぶ機会がなくなったことが大きいような気がします。

やはり、「私教育」で一番大事なところは家庭や地域社会にカギがあると思っています。この両方ともに、社会経済、いろんな要素の中で崩壊しているのは事実です。私教育をもう一度考え直そうと思うと、地域社会から見直さないといけないのでしょうね。

──地域のコミュニティがたいせつなんですね。

浦野まさにオンコミュニティ(地域共同体)での教育です。それに対してオンキャンパス(大学構内)だけで教育ができる、というのは違うと思います。今、何か日本全体の考えがオンキャンパスだけの方向へいっている気がします。

──地域のコミュニティを、どう形成すればいいか、お考えはありますか?

浦野ひとつは社会人の方々に教育に戻ってきてもらうことでしょうか? 世界の高等教育機関(大学)では、四分の一ぐらいは一度卒業した社会人が入ってきています。ところが、今の日本では微々たる状況です。もうひとつは、「大学の実用性」、教育の成果を地域に還元することです。これをもっと深く突き進めていいのでは…と思います。それぞれの大学が地域の中で、どんな貢献ができるのか、ということを学生、教職員と地域の人が議論してほしいですね。それによって変わることがあると思います。

──地方の大学の役割は大きいですね。

浦野地方の大学はその地域の中で「知的頂点」です。その役割は大きい。その地域の中でどんな産業が、文化が…と考えたときに、特性などをいかした「提案力」をしめすことが大事です。それなしに「産学連携」といって、産業側からの要請を待っているだけではどうしようもないわけです。大学が地域の中で何ができるのか、学生、教職員と地域の人たちとの議論が必要となります。

──大学をまきこんだひとつのコミュニティ形成となるわけですね。大学では、どのような「教育」、あるいは「学び」をすべきとお考えでしょうか?

浦野大学の学びの根幹は、「想像力」「応用力」を身に付けることだと思います。知識の偏重はよくないとも言われますが、その知識に裏づけがあるのなら、何を勉強してもいいと思います。特に大学では、こういった想像力、応用力をつける、先生の教え方が大事です。数学の公式をただ暗記するのではなく、科学的な手法で、どうやってその公式が証明されたのか? またその公式をどう使うのか? その「応用力」が「想像力」を生みます。

──学んだ知識をもっと広い視野で生かすということでしょうか。

浦野そのとおりです。人間の知恵は限られています。2000年もの間、五つのアカデミックスキル、人文科学、社会科学、自然科学、芸術的感性、運動能力の組み合わせでできるのが、人間の限界ではないでしょうか? これらの知識を、生活者の課題を解決する際に、このデータとあのデータを応用すれば対応できるよね…、というようにいろんな分野の他の人と議論して説得できる。まさに想像力をもってどう知識を使うか、応用力が重要なのだと思います。

──最後に家庭のしつけの中でも大事な「食育」についてお聞かせください。

浦野残念ながら、食育の原点である「地産地消」の考えが日本では根付いていません。カロリーベースで自給率が4割しかないのが現状です。野菜は自給しているといいますが、一度中央市場へ集めてから消費者へバックされることが多いわけです。

普段の「食事」で健康を保ち、普段の運動で元気なカラダをつくるんだ、というのが「食育の原点」だと思いますね。本来、家族で同じ時間帯に普通に話をしながら、食事をすることは「楽しいもの」です。

「食」という漢字は「人に良い」と書きます。キチンと普段から食事をしていれば健康なカラダをいつまでも保てるのです。

このインタビューは2013年6月3日にニチレイ本社で行われました

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浦野 光人(うらの みつど) 1948年愛知県生まれ、文科省中央教育審議会委員、株式会社ニチレイ会長
浦野 光人

1971年、横浜市立大学文理学部経済地理学科卒業後、日本冷蔵株式会社(現・ニチレイ)入社。冷凍企画、低温物流、情報システム、経営企画部門などのリーダー職を経て、2001年に代表取締役社長に就任。2007年から代表取締役会長。

また、経済三団体のひとつである「経済同友会」幹事でもあり、経済界の代表として、文部科学省中央教育審議会の委員をつとめる。

そのほか、三井不動産株式会社他数社の社外取締役、内閣府の規制改革会議の委員などとして幅広く活躍している。

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