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スペシャル インタビュー

特別企画/馳浩文部科学大臣に聞く 教職員の力を結集して! 〜教員の資質向上に総合的に取り組む〜 文部科学大臣 馳浩

「教員の資質能力の向上」や「高大接続改革」「学習指導要領改訂」など、重要課題が進行中の学校教育界。「教員定数」についても中央教育審議会から緊急提言が出された。文部科学行政の舵取りをする馳浩大臣に抱負や今後をうかがった。

1)自分の経験を踏まえて教職員の資質向上に向けた取り組みを

──どのようなことに重点をおきたいとお考えでしょうか。

大臣私は少しの期間ですが高等学校の国語の教員をしていました。その後、予備校で教えたり、大学の非常勤講師や専任講師として教壇にも立たせていただいたりしました。こうした経験をふまえて、教員の資質向上に向けての取り組みが重要だと考えています。

特に、養成、採用、初任者研修を含めた各種の研修、そして、教員免許更新制度を通じた質の担保ですね。

同時に、現場に出た教職員も、必要に応じて学び続けることのできる環境を提供する。これから、教職大学院を各都道府県の特に国立大学で充実させていく予定です。そうすると、意欲と能力のある若手教員が1年か2年、学び直しができ、さらに専門性を高めることができます。また、退職教員を教職大学院の教員として採用し、後進の育成にあたっていただく。

教員の資質向上には、養成と採用と研修と免許更新制度、教員になったあとも学び続けることができる環境づくり、当然それに対応した処遇の改善、こうしたことが総合的に必要だというのが、これまで私の終始一貫した取り組みです。

──教師たちも自らの資質向上を図り、意識を変えていかなければならない課題が実現に向け進んでいますが、子供たちがこれから求められる力について、どのようにとらえていらしゃいますか。

大臣野党時代、自民党の文教の最前線にいた下村博文さん、松野博一さん、山本順三さん、義家弘介さん、そして私とで、意欲と能力をもって児童生徒が学ぶ意味や、何を学ぶのか、何のために学ぶのかという、非常に根本的な議論を徹底的にやったわけですよ。小手先の改革ではなくて、本当に児童生徒が何を学ぶべきか、誰のために何をどうやって学び、それを自立にどう生かしていくか、自己実現にどう生かしていくか。

こういう議論を重ねて、下村前文科大臣もおっしゃったように、まさしく学ぶ力の三要素を明確にする。当然、それをいかに評価するかという評価のあり方も議論しました。そして、大学の入学試験との連動性がないと意味がないだろうという結論に至ったわけです。

2)“やる気スイッチ”も、学ぶ力の一つの要素

──学ぶ力の三要素が、今進められている「高大接続改革」や「学習指導要領改訂」の原型になっているわけですね。

大臣学ぶ力の三要素の一つ目は知識や技能。二つ目は、思考力や判断力や表現力。ここに応用力も入るでしょう。身につけた知識や教養をどう生かすかということです。三つ目は、私は非常にわかりやすい表現を使いますが、“やる気スイッチ”。

自ら使命感をもって、自分の能力を生かしていこうとする姿勢がないといけない。子供たちが自主性、イマジネーション、創造性をもって意欲的に物事に取り組む姿勢、態度、これらも総称して学力と呼ぼうと。

したがって、そういった学力を伸ばすことができる学習指導要領にしようと、検討をしていただいているところです。

高等学校までの学習指導要領の見直しに伴って、児童生徒の学力をどう評価するか。学力の見方が変わってくるわけですから、大学入学試験の在り方も見直していかなければならない。そうして進めているのが高等学校と大学との接続改革です。

3)アクティブ・ラーニングには教員の授業構成が大事

──学習指導要領の改訂では、学力の三要素に基づいて「何を学ぶのか」「何ができるようになるのか」「どのように学ぶのか」という議論が重ねられていますが、「どのように学ぶのか」という点について、アクティブ・ラーニングという言葉が頻繁に聞かれるようになりました。これについてお考えをお聞かせください。

大臣例えば、児童生徒が主体的に授業に参加して取り組む。クイズ番組で解答するように、身につけた知識によって思考し、表現する。したがって、アクティブ・ラーニングの3つの視点(深い学び・対話的な学び・主体的な学び)に基づく、その授業における教員の授業構成が大事だと思います。

そもそも、教員はどこまで教材を理解しているか。児童生徒が質問で迫ってくるものを、どこからでも受けて立つことができて、当然、それを打ち返す、投げ返す。場合によっては子供たちが打ちやすい球を投げたり、逆に打ちづらい球を投げたりしながら、授業をピラミッドのように積み上げていき、知の高みを目指していく。そういうことが、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善だと、私は思っています。

──教師自身も、従来の授業スタイルを見直して、改善を図っていかなければなりませんね。

大臣基礎的な教科・科目、内容はそれぞれあっていいと思います。国語にしても、現代文、古文、漢文、書写、あるいは話し方、ディベート、それぞれ鍛えていいと思います。他の教科も、基礎を学び、ドリル練習をし、応用に入っていくという展開は必要だと思います。

これに加えて、社会的な課題や、身近な生活について考えたり、人生設計や多種多様な職業について考えるなど、得られた知識をもとに物事を考える。そして、答えが一つではないゴールに向かって協力し合う。そういうビルドアップ型の授業をつくっていく。それには教員の力量や教養が今以上に求められます。そういった点での発想の転換をしていただきたいと思います。

4)教職員同士が仲良くやらないとだめ

──授業改善も、先生方個々の努力に加えて、学校全体として取り組んでいく傾向が強くなっているように思います。問題行動などへの対応にしても「チーム学校」という言葉も登場しています。学校の組織的な動きについては、どのようにお考えでしょうか。

大臣基本的には、教職員が仲良くやらないとだめです。管理職とも同僚とも、同じ教科の先生同士も、非常勤も専任も臨任も、人間同士のつきあいができるようにすることが大事。二つ目は情報の共有です。中学校、高等学校は教科担任制ですが、生徒がどんなときに本音を言い素顔を見せるか、それを丁寧に拾い集めて、情報を共有し、児童生徒の人格形成に貢献するのが教職員のテクニックではないかと考えます。

したがって、教職員同士の仲が悪かったら、職員室が険悪な雰囲気だったら、そういう空気にならないでしょう。教職員の目が子供たちの日常に向いていくように、もちろん体制も必要ですが、基本的には教職員同士が仲良くしないといけないですよ。

──近年、全国各地で採用数が増え、若い先生方も多くなっていますが、一方で、メンタル面が原因で学校を休む20代、30代の人たちも増えているそうです。

大臣職員室でいじめがあったりしてはだめなんですよ。教職員それぞれは、担任をもっていれば自分のクラスがかわいいわけですが、他の教職員と教科で関わり、部活動で関わり、校務分掌などで関わって、お互いがコミュニケーションをとれる関係にしておかなければ、絶対にだめですよ。それが組織を生かす力です。

教職員それぞれの能力は千差万別ですが、教職員が固まれば固まるほど力強い集合体として力を発揮できるでしょう。児童生徒や教育に関する議論は大いにけっこうですが、職員室でいさかいがあったり、陰口を言ったりしては、いい教育ができるわけがありません。

5)初任の教員であってもプロフェッショナル

──職員室の空気づくりは、管理職の重要な役割でしょうか。

大臣管理職だけが考えればいいものではありません。初任の教職員であっても、自分が校長だと思ってやらなきゃいけない。1年目、2年目の教職員だってプロフェッショナルですよ。自分が校長だったらとか、あるいは学年主任だったらとか、そういう立場に立って、自分はどう振る舞うべきかを考えてみる。学校をどうつくっていくか、それを管理職だけに任せたのではだめなのです。

管理職はそれ以上の仕事をしているんですから。地域とのつながりなど、きっと涙ぐましい努力をしているわけです。したがって、教職員それぞれが、相手の立場を常に考えながら行動していただきたい。

それともう一つ、「チーム学校」という言葉が出ましたが、学校だけではどうしても対応できないことがあります。そのようなところは、専門家の力を借りる。

相次いで窃盗事件が起こったり、看過できない暴力事件があれば、警察に連絡をする。あるいは弁護士と相談する。常軌を逸した保護者からの訴えに対しては弁護士に相談し、法的な措置が必要なら司法関係者と連携する。養護教諭だけで対応できない場合は医師やカウンセラーと相談する。問題行動への対応だけではなく、「うちのバスケットボールチームは、もうちょっと頑張れ」と思うのなら、バスケットボール専門の外部指導者を見つけてきて指導してもらう。

そういうふうに柔軟に対応すべきです。自分たちだけで抱え込まず、外部の力を借りることが必要です。

6)現場の実態を踏まえた教員の戦略的な配置を

──教員定数の削減が言われ、中教審からは「教職員定数に係る緊急提言」も出されました。結果として、平成28年度の予算案では、3,475人減となりました。これについてのお考えと合わせて、現場で頑張っている先生方へのメッセージをいただけますか。

大臣二つあります。

一つは、教職員の労務管理が大事だということです。教員には、4%の教職特別手当が支給されていますが、超過勤務手当は支給されません。たしかにタイムカードではかれる仕事ではありませんが、実際には長時間の時間外勤務をされている教員がたくさんいます。教員の処遇改善には私も先頭に立って取り組んでいきます。

二つ目は、教員の配置について。教育の質を上げるために1クラスの定員を減らす。そのために教員を増やす。というような考え方があります。でも、子供の数が多くても、力のある先生はしっかりクラスをまとめ、学力も上げているんですよ。

だから、先生をたくさん入れて1クラスあたりの子供の数を減らしたから、学校や教育内容がよりよくなった、という短絡的な発想はやめましょう。それよりも、教育現場の実態をふまえ、教育の質の維持・向上に必要なところ、効果的なところを見極めて加配を行うというような、教員の戦略的配置が必要です。

また、荒れた家庭が少なからずあって、そこから生じる問題が学校に持ち込まれます。朝ご飯を食べさせないで学校に送り出す保護者も少なからずいますね。学校教育の中に、そうした子供たちの生活環境に配慮しようという観点ももつとすれば、それに必要なのは教員の加配ではなく教職員を支えるサポートチームといったものです。例えばそれは、公民館の方であったり、町内会の方であったり、社会福祉協議会の方であったりするわけですが、何もかも教員に押しつけるのは酷です。

学校教育をとおして子供たちが平和な社会に暮らしていける、安心して勉強やスポーツに取り組める、そう出来るための戦略的な教員の配置、そして教員の資質能力の向上、そのための処遇改善、これらを総合的に考えるべきだと思います。

──先生方はすでにアクティブ・ラーニングにも取り組み、この教育改革の実現にも果敢に挑んでいこうとしています。ぜひ十分なバックアップをお願いしたいと思います。
ご多忙の中、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

2015年12月22日インタビュー

教育ジャーナル4月号」2016年より一部表現をかえて、部分抜粋
(渡辺 研/構成、小坂直樹/写真)
協力:(株)学研教育みらい・教育ジャーナル編集部
編集:学研教育総合研究所 教育情報研究室 寺村もと子

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馳 浩(はせ・ひろし) 1961年富山県生まれ。文部科学大臣。
馳 浩

専修大学文学部卒業。大学卒業後、母校星稜高校で国語科教員として教鞭をとる。1984年ロス五輪アマレス・グレコローマン90kg級で出場。星陵高校を退職しプロレスラーに転身。1995年 参議院石川県選挙区で初当選。2000年 衆議院石川一区で当選。文部科学政務官、文部科学副大臣などを歴任。2015年10月より現職。

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